東海道で生まれた有松絞は 江戸期のトップファッション
有松・鳴海絞り(ありまつ・なるみしぼり)は、愛知県名古屋市緑区の有松・鳴海地域を中心に生産される絞り染めの織物である。江戸時代に誕生して以降、日本国内における絞り製品の大半を生産しており、1975年(昭和50年)9月4日、国の伝統工芸品に指定された。「有松絞り」、「鳴海絞り」と個別に呼ばれる場合もある。
木綿布を藍で染めたものが代表的で、糸のくくり方で模様が変わる。その技法から、「くくり染め」とも称する。愛知県有松・鳴海地方の伝統工芸で、すべての工程がほぼ手作業によるため、非常に手間と時間を要する。 江戸時代に尾張藩が藩の特産品として保護したことにより、さかんに生産され、明治から大正時代にかけて新たな技法の開発により質量ともに発展を遂げた。様々な糸のくくりの技法と、技法の組み合わせによって生じる多彩な模様は最盛期には100種類以上、21世紀に伝え知られているものだけでも70種類はあり、その種類の豊富さにおいて世界一とみられ、他の絞り染め生産地に類を見ない。伝統的工芸品産業の振興に関する法律における「伝統的工芸品指定品目」に認定され、日本国外においても「SHIBORI」といえば有松を示す。伝統工芸品でありながら、継続的に多くの技術が開発・改良されてきた稀な事例とされる。 江戸時代には、東海道を往来する旅人に、故郷への土産物として好まれたことから街道随一の名産品として知られ、その様子は葛飾北斎や歌川広重らの浮世絵にも様々に描写されている。
伝統工芸と言いつつも、有松絞りを手に取るのは今どきの人。有松絞りは今、様々なカタチに進化しています。かつては手ぬぐいや浴衣が有松絞りの主な商品でしたが、最近では、有松絞りを活用したデザイナーズファッションブランドを立ち上げたり、絞りを体験できるワークショップを開催するなど新たな挑戦が行われています。他にも伝統色である藍色のほか、赤や黄色などのカラフルな色合いの商品をつくったり、現代に生きる伝統工芸として、様々な新しい取り組みが行われています。